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    インドネシアにおけるラマダンと宗教事情

    「ラマダン」という言葉を聞いたことがありますか?

    ラマダンとは約1ヶ月断食を行うイスラム教の大切な宗教的行事の1つです。

    インドネシアの人口は約2.7億人と世界で4番目に多い人口を抱えていて、その約87%がイスラム教徒という世界最大のムスリム国家です。(※ムスリムとは:イスラム教徒を意味するアラビア語)

    そのため、インドネシアでもラマダンは盛大に執り行われます。

    そこで、今回はインドネシアにおける宗教事情とラマダンについて詳しく解説していきます。

    インドネシア人の宗教事情

    インドネシアは国民の約87%の人がイスラム教を信仰していますが、いろいろな宗教の信仰が認められている他宗教国家です。

    なぜ、インドネシアにはさまざまな宗教を信仰する人がいるのでしょうか?

    インドネシアの憲法では「宗教的多元主義」を支持しており、宗教の自由が保証されています。そのため、キリスト教、ヒンズー教、仏教、儒教など多種多様な宗教を信仰しています。

    それはなぜかというと、インドネシアの地理的位置や歴史的な背景に答えがあります。

    インドネシアは東南アジアに位置し、周辺諸国と文化的交流をすることを通じて仏教やヒンズー教などが伝わりました。また、ヨーロッパ諸国や日本の占領などの植民地時代にはキリスト教や神道までが伝わりました。

    このような背景からインドネシアにはイスラム教以外の宗教を信仰する人たちがいるのです。

    (参考資料:インドネシアの宗教比率/外務省ホームページより引用)

    ・イスラム教 86.69%

    ・キリスト教 10.72%(プロテスタント 7.60%、カトリック 3.12%)

    ・ヒンズー教 1.74%

    ・仏教 0.77%

    ・儒教 0.03%

    ・その他 0.04%

    インドネシア人は必ず宗教に属している

    日本では自分がどのような宗教に属しているか普段あまり意識する機会は少ないですが、インドネシアではIDカードに宗教を書くための枠が設けられていて、生まれたときに必ず何かしらの宗教に属することが法律で定められています。

    インドネシアでは宗教がとても身近なため、ちょっとした挨拶代わりの日常会話で宗教を聞かれることが多々あります。

    全ての国民が宗教に属しているインドネシアにおいて「無宗教」であることはあまり良いことであると考えられていません。

    そのため、特定の宗教を信仰していない場合は「あまり熱心ではない仏教徒である」と解答することが無難です。

    宗教の優先度は高い

    宗教の優先度は高く、宗教上の儀式や宗教行事はとても大切にされています。

    それは就業時間中でも例外ではありません。イスラム教では1日5回のお祈りが義務付けられています。そのため、就業時間中にあたる15時と18時の2回はお祈りのための時間を確保する必要があります。

    インドネシアでビジネスを展開している日本の企業は、お祈りスペースの用意や従業員のお祈りの時間への配慮しているケースが多いです。

    また、イスラム教徒の人たちはイスラムの戒律で許可された食べ物や調理法で作られたハラルフードが主食です。一緒に食事をする際はハラルの店を選ぶようにしましょう。

    イスラム教徒五行について

    イスラム教にはコーランに定められる信仰上の5つの義務「五行」があります。

    五行には「信仰の告白(シャハーダ)」「礼拝(サラート)」「喜捨(ザカート)」「断食(サウム)」「巡礼(ハッジ)」があります。

    ラマダンはイスラム教徒五行の「断食」にあたる宗教行事です。

    ラマダンとは?

    なぜ断食するの?

    ラマダンは「欲望を抑え、食に感謝し、心身をリセットする1ヶ月間」であり、自分自身の信仰心を深め、飢えを経験することで当たり前の日常に感謝する気持ちを再認識する目的があります。

    そのため、ラマダン期間中は断食をするだけでなく喫煙、性行為、投薬、故意に物を吐くこと、噂話や人の悪口なども禁止されています。

    ラマダンの期間

    ラマダンはヒジュラ暦の第9の月に行われます。ラマダンとは9番目の月の名称です。

    ちなみに2023年は3月23日から4月21日までイスラム教のラマダンでしたが、毎年少しずつ時期がズレていきます。

    日本では60年で干支が生まれた年に戻る「還暦」があるように、ヒジュラ歴は周期が毎年約11日ずつ早まるため、だいたい33年で季節が一巡します。

    そのため、「ムスリムは同じ季節のラマダンを人生で2度経験する」と言われています。

    ラマダン月の食事事情

    イスラム教徒が断食を義務付けられているラマダン月の1ヶ月間。

    どのように断食をしているのでしょうか?

    ラマダンではその期間中ずっと断食するのではなく、ラマダン月の日の出から日没までの飲食が禁じられています。そのため、日没後から日の出までは飲食ができ、1日分の食事をすることができます。

    日没後はじめて取る食事を「イフタール」といい、イフタールは長時間空腹状態だった胃に負担をかけないよう1杯の水からはじめます。その後はデーツ(ナツメヤシの実)を食べることが多く、家族全員で食事をします。

    「断食」と聞くと辛いイメージがあるかもしれませんが、ラマダンでは日没後のイフタールを家族やコミュニティーの仲間たちと楽しくいつもよりも豪華な食事を楽しみます。

    また、人によっては日の出まで食事をする人もいるため、ラマダン期間中の方が体重が増えてしまう場合もあります。

    ラマダン明けのお祭り「イード・アル=フィトル」

    イード・アル=フィトルとは?

    ラマダンが明けると、ラマダン終了を祝い、神の祝福に対して感謝を捧げるイード・アル=フィトル(犠牲祭)というお祭りが開催されます。

    これはイスラム教の2大祝祭であり盛大に盛り上がります。

    ラマダン明けの1日目は1年に1度の特別な礼拝が広場か大きなモスクで行われます。

    人々はシャワーを浴び、香水をつけ、晴れ着(新しい洋服または一番良い洋服)を着て集まり、集団で礼拝を行います。

    また、この期間中はイード・アル=フィトルを祝うためにイード休暇という長期休暇に入ることが多く、店舗や企業が閉まり、実家に帰り家族や友人と共に過ごします。

    ラマダン期間中に注意すること

    ラマダンは大規模なイスラム教の宗教行事ですが、いくつか注意しておきたいことがあります。

    犯罪やテロを警戒する

    残念なことにラマダン期間中、またイード・アル=フィトル期間中は犯罪の発生が増加する傾向にあります。

    ラマダン期間中は夜に食事をするので外出することが多く、イード・アル=フィトル期間中は帰省や旅行が増えます。

    そのため、留守を狙った空き巣や強盗が多く発生するというのです。

    また、近年ではテロも発生しています。

    2016年7月にバングラディッシュの首都ダッカで起きたレストラン襲撃人質テロ事件では日本人を含む20人が犠牲になりました。また、2022年12月には西ジャワ州バンドンの警察施設で自爆テロ事件が発生していて、ラマダン期間中は人が多く集まる場所などのテロへの警戒が必要不可欠です。

    ではなぜ、ラマダン期間中にテロが起きてしまうのでしょうか?

    それは「ラマダン期間中に努力をすると天国に行ける可能性が高まる」という考えが背景にあるのではないかと考えられています。

    過激派の人たちは異教徒を排除することこそが努力であると信じている人たちも残念ながらいます。

    インドネシアに限らず全世界的にテロが起こる可能性がありますので、ラマダン期間中は警戒を怠らないようにしましょう。

    イスラム教の習慣を尊重する

    ラマダン期間中はイスラム教徒にとってとても神聖な宗教行事です。

    イスラム教徒以外の人たちはインドネシアにおいてラマダンに参加する必要性はありませんが、その習慣を尊重するよう心がけましょう。

    ラマダン期間中はイスラム教徒の目の前で飲食や喫煙は控えることが礼儀とされています。

    また、トラブルの元になるのでラマダンについて否定的な意見や感情があったとしても決して言葉には出さないでください。

    また、イスラム教徒以外でもラマダンに参加することは可能です。

    断食を通して周りのイスラム教徒の人たちと関係を深めるきっかけにもなりますので、ラマダンを試してみるのも良いかもしれません。

    まとめ

    いかがでしたでしょうか?

    インドネシアはイスラム教が国教とされ、とても宗教的儀式や行事を大切にしています。

    そのイスラム教の重要な宗教行事であるラマダン。

    この1ヶ月間は日の出から日没まで断食することによって自分自身や当たり前な日々に感謝するイスラム教徒にとってとても大切な宗教行事であるとともに、大切な人たちと過ごすことができるとても楽しみな期間です。

    感覚的には日本の年末年始に似ているかもしれませんが、日本ではお正月やクリスマスなど宗教が由来の行事が多くありますが、ほとんど宗教的意味が薄れてしまっています。

    インドネシアではイスラム教徒の人口が多くイスラム教の行事がとても大切にされているので、ビジネスの可能性を広げるためにもインドネシアの宗教的背景を知ることは重要です。

    私たちは日本企業のインドネシアへの進出を10年に渡りサポートしています。

    インドネシアに進出をご検討の企業様はぜひ一度ご相談ください。

    ◆参考URL

    ・外務省

    https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/indonesia/data.html

    ・在インドネシア日本国大使館(断食月(ラマダン)における注意喚起)

    https://www.id.emb-japan.go.jp/oshirase23_12.html

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