経済

    インドネシア新首都について

    インドネシアが首都を移転する計画を進めていることをご存じでしょうか?

    現在インドネシアの首都はジャカルタにありますが、インドネシア政府の新首都移転計画は数十年も前から検討され続け、ついに2022年に実行に移されることになりました。

    今回はついにプロジェクトが本格的に開始されたインドネシアの新首都移転計画についてご紹介します。

    インドネシア新首都移転計画とは?

    インドネシア新首都移転計画が初めて提案されたのは1960年代でした。当時、インドネシア初代大統領であるスカルノ氏が首都移転計画を進めようとしましたが、残念ながらこの時には具体的な話には至らず実行されませんでした。

    1980年代にはジャカルタの人口密度やインフラにおける問題が徐々に深刻になっていきました。。この問題を解決するためには「やはり首都を移転するしかない」という意見が多く集まり、再び新首都移転計画が提案されました。

    2000年代に入り、ようやく政府は真剣にどこに首都を移すべきなのかを検討するようになりました。

    そして、2019年にジョコ・ウィドド大統領が首都移転計画を正式に発表。新首都はカリマンタン島の東カリマンタン州に建設されることが決定しました。

    首都移転計画が本格始動すると思った矢先、2020年のパンデミックの影響を受け計画の進行が遅延。ようやくパンデミックの終息にあわせ、2022年から2045年までを5つの段階に分けて新首都移転計画がスタートしました。

    新首都開発計画の5段階

    2022年から2045年を5つの段階に分けている新首都開発計画ですが、具体的にどのような段階を経て進んでいくのかみていきましょう。

    第1段階

    第1段階は2022年〜2024年です。初めの2年で集中して中央政府やオフィス街、住宅地などの建物や施設の建築がメインで行われます。そして、首都を構成するために欠かすことができない公務員や軍隊、警察などの国家として動くための基本的な機能がまず初めに移転します。

    第2段階

    第2段階は2025年〜2029年です。

    この5年間は、経済基盤を作ることを重視した開発が本格的に進められます。工業団地、ホテル、エコリゾート、インダストリー4.0関連施設、大学などが開発される予定です。

    「インダストリー4.0」とは第4次産業革命のことで、製造業におけるデジタル技術や自動化など最新技術を用いた施設が導入されます。
    インドネシアの新首都は世界的にみても最先端の技術を集中させ、技術的にも経済的にも発展した都市づくりを目指しているのです。

    第3段階

    第3段階は2030年〜2039年までです。

    この5年間は生活をするために欠かせない水道、電気、ゴミ処理などのインフラの設備を行います。また、輸送システムや工業団地の建設など経済の基盤をさらに盤石なものにするための施設を開発します。

    そして、研究所や大学などの教育施設の開発や文化施設の開発を行い、魅力的な都市づくりを行います。

    第4段階

    第4段階は2035年~2039年です。

    この5年間は持続可能な開発をテーマにした環境保護が大きなテーマとなり、スマートシティ実現に向け、実際にそこで暮らす人たちのコミュニティの社会的調和を促進させます。2023年より進められていた新首都周辺の道路の開発も2035年の完成を目指して開発が行われています。

    第5段階

    最後の段階である2040年〜2045年の5年間は、全てのあらゆるサービスが提供され移転が完了となります。

    なぜ首都移転するの?

    なぜ、インドネシア政府は首都を移転することを決めたのでしょうか?

    人口過密

    現在の首都ジャカルタは人口過密が深刻な問題となっています。ジャカルタは約1000万人

    の人口を有していて、近郊の5つの都市(ジャカルタ、ボゴール、デポック、タンゲラン、ブカシ)の人口をあわせると3000万人となります。

    ジャカルタは経済的にも発展していて魅力的な都市です。そのため、ジャカルタやその周辺の年は地方からの移住などで急速に人口が増えてしまいました。

    人口増加は一見良いように見えるのですが、人口増加に伴う慢性的な交通渋滞。そして、住宅の不足や、公共サービスに対する要望や要求が増加し、行き届いたサービスを行うことが難しくなってきています。さらには、都市の拡大と人口の過密により大気汚染や水質汚染など環境に対する負荷も増加しています。

    沈下問題

    ジャカルタは沈下速度が世界で最も早い都市の1つと言われているほど、地盤沈下が進んでいます。

    地盤沈下の主な要因は地下水の過剰な汲み上げです。ジャカルタの多くの住民とビジネスは水の配給を地下水に依存しています。

    急速な都市の発展と人口増加により地下水の抽出が過度となってしまい、水で満たされていた地下の空間が圧縮され、その結果地盤が沈下することになってしまいました。

    また、経済発展が進むジャカルタでは多くの企業や工場が進出したことで高層ビルや重いインフラが増加しました。このような重い構造物は弱くなってしまった地盤にさらにダメージを与え、地盤沈下を加速させる要因の1つとなっています。

    外的要因としては、地球温暖化の影響で海面が上昇しているため元々低地にあったジャカルタは洪水のリスクが増加し、都市の一部がさらに水没する危険性を孕んでいます。

    経済格差の縮小

    インドネシアでは、地域によって経済発展の度合いがかなり異なっています。

    ジャカルタなどの都市では技術が発展し、多くの人たちがジャカルタやその周辺に移住してきています。ジャカルタ周辺に経済活動が集中してしまう一方で、地方ではインフラ開発なども進まずどんどん経済格差が広がってきています。

    しかし、首都を移転することで新しい首都とその周辺地域におけるビジネスや雇用のチャンスが生まれることが期待されています。

    また、ジャカルタから離れた場所に移転することで国内の経済活動のバランスを改善する可能性もあります。

    国民の反応は?

    インドネシア国民は実際に首都移転計画についてどう思っているのでしょうか?

    賛成の声

    インドネシアの首都移転計画には多くの人が賛成の声をあげています。

    賛成の人たちは首都移転がもたらす利益や期待される影響に、良い印象を持っています。
    首都移転に向けて自分や家族の人生設計を立てる方も少なくありません。

    また、ジャカルタは人口過密、交通渋滞、地盤沈下といった都市ならではの問題を抱えていて、それらの緩和を期待する声が多くあります。

    首都を移転することでジャカルタには良い部分のみを残し、別の場所に首都を作ることで経済活動を分散させる目的もあります。

    また、新しい首都は最新の技術を取り入れて作られるため、いわゆる「未来都市」のような最先端の都市になることが予想されます。
    世界的に見ても「最新の都市」となることでインドネシアの注目度もかなりアップします。そうすることで海外からも企業やビジネスチャンスを呼び込むことができ、インドネシアの発展がさらに期待されます。

    反対の声

    インドネシアの首都移転計画について、反対や懸念を持つ声も上がっています。

    インドネシアは若者の雇用問題やインフラの不足、宗教的・民族的課題、環境問題、感染症対策など多くの課題に直面しています。

    そして、首都移転には莫大な費用がかかると予想され、国民は経済的負担を共に背負うことになります。また、新しい首都を作るためには大規模な開発が必要となり、環境への影響も心配されています。何より、首都を移転してもジャカルタが現在抱えている数々の問題を解決することはできないのではないか?という指摘もあるのです。

    そのように経済的にも環境的にもリスクを背負ってまで首都を移転する必要があるのか?疑問に感じる国民もいます。

    また、首都を移転することによって得られるメリットは魅力的ですが、実際問題として目の前の問題を後回しにして首都移転に莫大な予算をかけても良いのかという不安の声があることも事実です。

    これから首都移転計画を成功させるためにも政府と国民の間でお互いに理解を深めていくことが必要不可欠です。

    まとめ

    いかがでしたでしょうか?

    インドネシアの首都移転計画は長期間に渡り行われ、莫大な資金も投入されます。それらの計画には良い面も悪い面もあり、賛否両論の意見が国民のなかに存在します。

    ですが、首都が移転した後も現在の首都であるジャカルタは全ての機能を失うわけではありません。ジャカルタはインドネシアで最も発展した都市です。

    世界中の企業が拠点を構えているため、経済的機能はどうしてもジャカルタに大半が残ることになります。

    首都移転にはさまざまな難しい問題もありますが、まだまだ経済的にも将来性があるからこそ首都を移転するのであり、インドネシアは今後ますます発展する国です。

    新首都移転にはたくさんのビジネスチャンスの原石が眠っている可能性があります。日本の技術はインドネシア政府からも期待され、すでに日本の住宅メーカーが現地で視察を行っています。

    ですが、まだ計画は道半ばです。

    首都移転計画は具体的な施策や成功へのロードマップなどが不透明で

    不確定な要素が多いのも事実です。

    私たちは日本企業のインドネシアへの進出を10年に渡りサポートしてきた経験に基づき、最新情報に常にアンテナを張り、現地の動向を慎重に判断することができます。

    インドネシア進出をご検討の企業様はぜひ一度お気軽にお問合せください。

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