バリ島のニュピ祭
バリ島にはニュピ祭という、バリ島の「お正月」を祝うお祭りがあります。
お祭りというと、賑やかで煌びやかなイメージがありますが、バリ島のニュピ祭は「静寂の日」とも呼ばれるひたすら静かに新年を迎える日なのです。
そこで今回のコラムでは神秘的なニュピ祭についてクローズアップしたいと思います!
Contents
ニュピ祭とは?
バリ島ではヒンドゥー教を信仰し「ウク暦」「サカ暦」の二つの暦に従って暮らしています。ニュピ祭はバリ島のお正月と呼ばれる重要な祭りであり「サカ暦」の新年に当たり、重要なイベントです。
様々な禁止事項
ニュピ祭の期間中はバリの伝統的な価値観や信仰を尊重するために様々な禁止事項があります。
①火や電気の使用の禁止
ニュピ祭の期間中は火や電気の使用が禁止されます。家庭や公共の場での火の使用や電気の利用は一切禁止されているので、人々は暗闇の中で過ごします。
これは、悪霊を追い払い、浄化するためのものであり、バリ島全体が明るい光から遠ざかります。
②外出の禁止
ニュピ祭では外出も厳しく制限されています。バリ島の住民だけでなく観光客もこの期間はいえや宿泊施設から出ることは許されません。
空港の利用も飛行機の離発着も緊急以外は全て中止になります。
救急車であっても、各自治体の確認がないと出動することができないほど厳格に制限されています。
もしこの時期に旅行でバリ島を訪れたとしても、気軽な気持ちで外出するのはやめましょう。外では警官や自警団の方々がパトロールしていて、捕まってしまう可能性があります。
ホテルの内部では制限が緩和されていますが、プールの営業時間が短くなったり、屋外レストランが営業中止することもあるので、事前にリサーチするようにしましょう。
③仕事や殺生の禁止
ニュピ祭の期間内は仕事や殺生が禁止されます。バリ島の伝統的な価値観や信仰を尊重し、バリ島の住民はこの期間を通じて自己浄化や精神的な集中を行うために瞑想などして過ごします。
バリの人々にとってのニュピ祭
バリの人々にとってニュピ祭と前日に行われるオゴオゴは非常に重要な神聖な儀式です。
しかし、これらの儀式を「楽しみ」という言葉で表現するのは少し複雑かもしれません。
なぜなら、ニュピ祭は静寂と内省の日であり、その日には外出や娯楽活動が禁止されているからです。
外出や娯楽活動が禁止されていますが、ニュピ祭の当日には家族や友人と一緒に過ごし、家で静寂な時間を楽しむことが一般的です。
ニュピ祭期間中に気をつけたいトラブル
ニュピ祭とオゴオゴの期間中にはいくつかのトラブルが発生する可能性があります。
①騒音や混乱
オゴオゴの期間中は、通りや広場がとても賑やかになります。音楽や太鼓、花火などでとても華やかなのですが、一方で一部の人々が騒動を引き起こす可能性もあります。
特にアルコールを摂取した人たちによるトラブルは毎年報告されているので注意しましょう。
②観光客と地元住民とのトラブル
ニュピ祭期間中は世界中から、この祭を体験しようと観光客が押し寄せてきます。
しかし、文化や言語の違い、そして行動規範の違いから観光客と地元住民とのトラブルは毎年一定数起こっています。
自身が観光としてバリ島を訪れる際は、宗教的儀式であるという背景をしっかりと理解し、地元の習慣やルールを尊重し規則を守ることが重要です。
外出禁止や電気の使用禁止など慣れないことも多い期間ですが、トラブルを事前に防ぐためにも警察や地元当局の指示にはしっかり従うようにしましょう。
ニュピ祭はいつ開催されるの?
ニュピはバリ島の暦で決まるため、毎年変わります。
2024年は3月11日に開催されました。
この開催日はウク暦のカサダ月の新月の日に設定されますが、厳密な日程はバリのヒンドゥー教の専門家がパンチャンガという占星術暦を参照し、最適な日付が決定されます。
この日付は、星の配置や天文現象に基づいており、吉凶や祭の成功に影響を与えると信じられています。
この祭の日程が決まると、人々は準備をはじめ、祭りに向けてオゴオゴの政策や宗教的な儀式の準備を行います。
この日程は何年も先のものが決まっているわけではありませんが、準備や儀式を行うので、開催日が決定されるまでには一定の準備期間があります。
そして、開催日が決定されると地域の人々や観光客にも日程が広く周知され、祭りに向けて急ピッチで準備が進められるのです。
ニュピ祭の前夜祭「オゴオゴ」
ニュピ祭の前日には「オゴオゴ」という盛大なお祭りが開催されます。
日本でもお祭りの時には山車が練り歩いたりしますが、オゴオゴでも各村で造られた大きなハリボテが街を練り歩きます。
日本のねぶた祭にも似ていますが、オゴオゴの方がよりリアルな形相をしています。というのも、オゴオゴには各家庭から出た悪霊が宿ると言われ、最後には乗り移った悪霊とともに焼き払われるため、鬼や悪魔の形相をしているのです。
このオゴオゴは最後には焼き上げられてしまいますが、およそ1ヶ月ほどかけて各村で制作しています。
地域によって特色があります。
①ウブド地域
ウブドはバリ島内でも有名な芸術の中心地であり、オゴオゴの制作においても芸術性が反映されたものができあがります。
独創的な芸術的なデザインや細部へのこだわりが特徴で、彫刻や絵画の技術が生かされ、美しく洗練されたオゴオゴが制作されます。
②ジンバラン地域
ジンバラン地域はバリ島の南部に位置する海岸沿いの地域です。
豊かな自然環境が特徴で、海が近くにあるため、この地域のオゴオゴは海や海洋生物をテーマにした魚や海亀、イルカなどのデザインがよくみられます。
③クロボカン地域
バリの中央部に位置するクロボカン地域は農村地帯が広がっています。ここでのオゴオゴは農村での生活をテーマにしたデザインが特徴です。
農作物や動物などが特徴的に表現され、地域の豊かな自然環境を讃えるものもあります。
オゴオゴとニュピ祭を行う意味は?
①準備と浄化の期間
ニュピ祭の前日にオゴオゴが行われることで、祭の準備と浄化が行われます。
オゴオゴの制作やパレードは悪霊や邪鬼のような邪悪な存在を追い払うための準備として考えられています。
邪気を払うことで、人々は心身の浄化を行うことができ、新年を迎える準備をすることができます。
この2日間を通じて、バリの人々は精神的な浄化と新しい始まりを迎える準備をすることができるのです。
②邪悪な存在の追放と祝祭の統合
オゴオゴはパレードの後、燃やすことで悪霊や邪悪な存在を追い払う意味合いを持っています。そのパレードは盛大に華やかに行われ、とても賑わいがあります。
一方ニュピ祭は「静寂の日」と言われるほど静寂と内省の日であり、精神的な浄化の日として捉えられています。
この2つの儀式が組み合わされることで邪悪な存在の追放と新しい始まりへの希望が表裏一体となり、祭としての存在を完全な物にしています。
ねぶた祭とオゴオゴ
オゴオゴとねぶた祭はそれぞれインドネシアと日本の伝統的なお祭りであり、興味深い類似点と相違点があります。
①類似点
共通点として、どちらの祭も夏に開催され、大勢の人々が集まって行われます。2つの祭とも地域のコミュニティや家族の繋がりを重視し、伝統を守りながら祭を楽しむ機会となってきています。
また、オゴオゴは大きなハリボテ、ねぶたは大きな提灯というように、どちらも大きな人形を引いて町内を練り歩くという点でも似ている部分があります。
②相違点
一方で2つの祭りには、顕著な相違点もみられます。
オゴオゴはバリ島のニュピ祭りの一部として行われ、悪霊や邪悪な存在を宿したオゴオゴを焼き払うことで新年を迎えるための浄化の儀式として成り立っています。
オゴオゴはとても宗教的な意味合いが強く、バリのヒンドゥー教に根差している神聖な儀式です。
一方ねぶた祭は、独立したお祭りであり、提灯に様々な絵柄が描かれ夜の町を練り歩くダイナミックなパレードで、地域の伝統や風習を守りながら地域の人々が一堂に集まって楽しむための重要なイベントです。
まとめ
バリの人々にとってニュピ祭は新年を迎えるための神聖な儀式であると同時に、悪霊や邪気を追い払い、精神を清らかに保つための特別な期間とされています。
だからこそニュピ祭の間は、例え観光客であっても同じように過ごさなくてはならず、宗教の違いや外国人だからといって特別待遇はありません。仕事をしない日でもあるので、この日はホテルの移動やホテルのチェックアウトなどは避けた方が無難です。
しかし、電気が消えるニュピ祭の日だからこそ、夜空には満点の星空が輝いていて非日常的な空間を楽しむことができます。
非日常空間を楽しむためにニュピ祭を見に行く方も多いかもしれませんが、子供連れの場合注意も必要です。バリの子供達は小さい頃からオゴオゴの存在に慣れ親しんでいて、祭の儀式としての意味を理解していますが、クオリティが高くリアルで怖いものが多いオゴオゴに恐怖を感じる子供もいるので、旅行などで家族で訪れる場合はぜひ配慮してくださいね。
インドネシアの宗教的な祭について理解を深めることは、これからインドネシアでビジネスを行おうと考えている方にとって、インドネシアに住む人々の生活や価値観を深く理解するために必要不可欠です。
私たちは日本企業のインドネシアへの進出を10年に渡りサポートしてきた経験に基づき、常にアンテナを張り、現地の最新情報が常に入ってきているため、インドネシアにおける文化や生活習慣の違いなど、理解するために必要な情報を提供することも可能です。
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